機械式時計の精度

機械式の時計は振り子の原理を使って精度を出しています。

振り子の原理は何かというと、振り子の振り幅が変わっても周期は同じだという原理です。

昔、ガリレオガリレイがランプが揺れる様子を見て
「あれ?ランプの揺れる幅が段々小さくなっているのに、ランプが1往復するのにかかっている時間が同じじゃないか?」
と気づいたと言われています。(専門用語で等時性と言います)
まぁ普通の感覚では出てこない気づきですねw

例えば、1往復にかかる時間が1秒の振り子があったとすれば、その振り子が、最初勢いよく振っていて、だんだん元気なく振ってこようが、1往復は1秒なので、一往復で1秒ずつ秒針が動く時計を作ればよいわけです。

ですが、振り子は一度振りはじめても、振り子を動かす力がどこかで加わらなければ、そのうち止まってしまいます。
その為、腕時計の場合などは、ゼンマイのほどける力を利用して、振り子を弾いて力を加えているわけです。

ところが、この力を加える場所というのが問題で、振動の中心(振り子が自然に止まった状態の位置)以外の場所で
力が加わると、振り子の周期を乱してしまいます。これが、誤差につながります。(専門用語でエアリー(エヤリー)の定理)

さっきは、あっちで力が加わって、一瞬周期が進みなったのに、今後はこっちで力が加わっちゃったから遅れ作用しちゃったよ。
というような事が、振り子に様々な力が加わるたびに起こっています。

腕時計でしたら、腕に付いているわけですから、ぶつけたりもしますし、色々な姿勢になったりします。
そのたびに、いろんな力が振り子にかかって周期を乱します。

実際には、腕時計ですとロービートと呼ばれるものでで2.5往復(5振動)で1秒カウントだったり、ハイビートですと5往復(10振動)で1秒だったりします。

これでだいたい、1日に誤差が10秒以内に収まっていればまぁよく調整された時計といえると思います。

さんざん腕につけて動き回っても、1日に10秒もずれない位、振り子の法則と言うのはよく出来た法則と言えます。

この自然の偉大な法則を乱さないように研究され続けてきたのが機械式時計の歴史と言えると思います。

そして、この法則を最大限に引き出せるようになり始めたころ、大航海時代が始まります。

優れた精度を持つ時計があれば、太陽や星の位置と時間で、今、世界のどのあたりにいるのかが解ります。
この詳しい説明はこのページ「TOKEI ZANMAI様の時計の歴史」にありました。
良い時計を作れば世界を制する時代があったわけです。時計ってすごくないですか?
今もカーナビなどでこの原理が利用されているはずです。

逆に言えば、機械式時計の精度は、大航海時代にほぼ完成されたといえるかもしれません。


そして、現代ではアンクル式という振り子に力を加える装置(専門用語で脱進機)が良く使われています。
ちなみに、オメガが採用した事で有名になったコーアクシャルというのもこの装置の種類です。

なぜコーアクシャルの採用なのかですが、

両方の装置とも振り子(テンプ)に力を加えるわけですから、周期を乱してしまう要素を持っているわけです。

そしてコーアクシャルの設計は、テンプに力を加わえる方法が、振動の中心に近ければ近いほど、周期を乱さないという法則を実現するために考えられているからだと思います。

要するに、振り子が自然に振れるのをどれだけ邪魔をしないかを考えて作られた装置と言う事です。
そしてどんな装置が使われているかが、機械式時計の魅力でもあり、その研究が時計の歴史でもあります。


話は変わりますが機械式時計の精度話で、

@毎日必ず10秒遅れて1週間で70秒遅れる時計と、
A1日に10秒進んだり、20秒遅れたりするけれど、1週間後に誤差0秒の時計

どちらの精度が良いと思いますか?

これは

@の方が安定していて良い時計といえると思います。10秒進ませる事ができれば0秒になりそうだからです。
Aはたまたま0秒だった可能性があります。もし、10秒進ませる調整をしても、10秒進んでくれるかわかりません。

安定していると言うのも重要な要素だと思います。


ちなみに、クオーツ(普通の電池式の時計)だと、1秒で32768振動も振動しています。
こんなに刻んでいる私のデジタルのクオーツ時計は1日0.5秒くらい進んでいきます。

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